お墓の前で、こんな話(1)

6月に入りました。

そろそろ梅雨の便りが届き始めますね。ジメジメうっとおしい、洗濯物が乾かない、外へ出るのが億劫、作物を育てるのは不可欠ですが、梅雨が大好き!と言う方はあまりいません。でも憂鬱だけではつまりません。今回は梅雨時期の花のお話です。
梅雨の花といえば、真っ先に浮かぶのは紫陽花(アジサイ)。淡い色どりは水彩画のようで、絵手紙や染め物では人気の柄です。一方「色が変わる」イメージがあって「浮気・移り気」の例えに使われることも多い様です。実は植えられた土壌の酸性/アルカリ性の度合いによって同じ種類でも色が変わるそうで「移り気」どころか「置かれた場所に従順」な花なのだそうです。

ご存知の通り、お寺と紫陽花は相性が良いです。紫陽花を名物にする有名なお寺もたくさんあります。
雨の中のお参りは、文字通り“晴れ晴れ”とはいきませんが、雨に濡れた紫陽花の色合いに心が和み、町中では聞こえない、傘に当たる雨粒の音に耳を澄ましていると、心の中の雑事がすぅーっと洗い流されることもあるでしょう。

やはり、お寺に似合う花なんですね。

この時期に見られる花といえば立葵(タチアオイ)もありますね。ご近所のお庭や花壇、公園などで見かけることが多いでしょう。
まっすぐにちょうどヒトの背丈ほど伸び、大振りで鮮やかな花をつける人気のある花です。

残念ながらお寺で見られる機会はあまり多くはありません。
供花にするには大振りすぎるし、切り花にも向かないようです。

実は、紫陽花の「移り気」同様、この花にも俗説があります

「必ず、下から順に咲く」というものです。ご存知でしたか?

小さな青いツボミが大きくなり、先端が赤やピンクにほころんで、大きく堂々とした花が開く。するとすぐ上のつぼみがほころび始め、その上の花はつぼみが育つ。花が開く過程が図鑑のように並んで見られる。同じ花を観察し続ければバトンタッチするように花が順に昇っていく様に見える。

そのことから、努力や成長の縁起担ぎに植える方もいると聞きます。

残念ならが「必ず下から順番」ではないようで、陽当りとか環境によってはひとつふたつトバして上のつぼみが開いてしまうこともあるようですが、ほぼ順々に花が昇っていく様子は、他の花と少し違った楽しみ方ができます。

少し想像力を働かせると、あるイメージが浮かんできました。バトンタッチしながら、順に花を咲かせる。それは、先祖から順に命を受け継いで、いま命を咲かせている自分。中には次に控えるつぼみの成長を見守っているかもしれません。

そう考えるとお寺やお墓に似合う花だと思うのですが、どうして流行らないのでしょう? どなたかご存知の方がいらっしゃったら教えてください。

故人がいるのはTVや新聞のない世界(かどうかはわかりませんが、なんとなく無さそうなイメージですすよね)お墓の前で、お線香が短くなる間、目にした花、備えた花、そんな花についての話はいかがでしょう。

静かで落ち着いて、豊かな時間。
お墓参りって、意外と“楽しい”ですよね。